スタッフ座談会の様子をお届けしますーCAREOTH PICKS vol30-
「一人ひとりの「一歩」に寄り添う」
リッツで支援に向き合う3人にお話を伺いました

Q. まずは、皆さんが現在どのようなお仕事を担当されているのか教えてください。
E:私はサービス管理責任者として、ご利用者一人ひとりの個別支援計画を作成しています。また、職員が働きやすい環境づくりや、ご利用者との面談を通じて、自立訓練をご利用の方が安心して通える環境づくり、就労移行支援をご利用の方が就職に向けて前向きに取り組める環境づくりを、職員みんなと協力しながら進めています。事業所によって異なるとは思いますが、私は支援計画の作成には現場を知らなければ難しいと感じ、実際に現場に入りながら利用者さんと関わることを大切にしています。
K:私は就労移行支援の職業指導員を担当しており、利用者さんが就職を目指すための訓練を行っています。内容は本当に幅広くて、ビジネスマナーを学ぶプログラムもありますし、長く働き続けるためには「心が折れない」ことも大切なので、メンタル面について学ぶプログラムも行っています。また、実際の仕事を想定した作業訓練として、仕分け作業なども行っていますよ。ただ、私たちが一番大切にしているのは、「就職すること」だけではないと思っています。就職は、ご本人だけの力でもできるかもしれません。でも、その先で長く働き続ける力を身につけていただくことが、私たちの役割だと思っています。そのために、さまざまな角度からサポートしていますね。
M:私の担当は自立訓練ですね。自立訓練は一人で生活できるようになるためのトレーニングが中心になります。リッツでは自立訓練と就労移行支援を組み合わせて利用される方も多くいらっしゃいますが、現在自立訓練を利用されている方は、すぐに就職を目指すというよりも、その前段階として生活の土台づくりが必要な方が多いですね。そのため、就労移行支援へ進むための準備という位置づけでプログラムを考えています。
Q. 同じ支援の中でも、一人ひとりに合わせて内容を変えているのでしょうか。
K:個別で行うものもありますし、グループで行うものもあります。例えば事務職を目指している方には、パソコンでデータ入力の練習をしていただきます。一方で、手先を使う作業が得意な方には、ビーズの仕分けなど、集中力や持続力を養える訓練を行っています。ご本人の希望と必要な訓練、その両方を考えながら、「この方には何が一番合っているか」をスタッフ全員で相談して決めています。
M:一人ひとりに合わせてという事だと、必要に応じて「訪問支援」を行うこともあります。さらに「就労移行支援」では、精神障がいのある方などで、人とのコミュニケーションが原因となって就労が難しくなった方もいらっしゃいます。そうした方には、「Zoom」を活用した支援を行ったり、通所されている方と同じプログラムや作業訓練を受けられるようにしたりと、一人ひとりに合わせて幅広い支援を行っています。

Q. 皆さんが利用者さんと関わるうえで大切にしていることなんでしょう。
E:私は、「何でも話せる存在」でありたいと思っています。利用者さんが「Eさんなら相談できる」と思ってもらえるよう、「話しやすい雰囲気づくり」を一番大切にしています。
M:何気ない一言で、自信を失ってしまう方もいます。例えば英語の授業で、発音を間違えたことで周りに笑われ、それがきっかけで英語が苦手になってしまった、という話を聞くことがあります。だからこそ、「できないこと」を責めるのではなく、「できなくても大丈夫」という姿勢で接することを大切にしています。利用者さんの中には、不登校を経験された方もいますし、「一般的には知っているはず」と思われることを知らない方もいます。だからこそ、「知らないこと」を前提に接するのではなく、「知らなくても大丈夫」という気持ちで関わるようにしています。
K:M先生のお話聞き入っちゃいましたね。私自身はそうですね、まず受け止めることだと考えています。一見すると「それは良くない行動だ」と思うことでも、ご本人なりの理由があります。例えば、物を乱暴に扱ってしまった時でも、すぐに注意するのではなく、「なぜそうしたのか」をまず一緒に考えます。その理由を知ることが、支援の第一歩だと思っています。
Q. まず受け止めることを大切にする一方で、社会へ出ていくためには、時には伝えなければならないこともあると思います。その点については、どのように考えていますか。
K:そこが一番難しいところです。私はもともとカウンセリングを学んできたので、「受け止めること」の大切さはよく分かっています。でも、受け止めるだけでは成長につながらないこともあります。だから、「今は受け止めるタイミングなのか」「今は伝えるべきタイミングなのか」を、いつも考えています。就労移行支援では、利用者さんが社会の中で認められる行動を身につける必要があります。信頼関係を壊さずに、必要なことをどう伝えるか。それが一番難しく、そして一番大切にしていることでもあります。
M:私は、あえて利用者さんと近づきすぎないことを意識しています。もちろん信頼関係は大切です。でも、友達のような距離感になってしまうと、お互いに良くないこともあります。例えば、お金を貸してほしいと言われても、それは支援員としてできることではありません。だからこそ、「信頼される支援員」でありながら、「支援員と利用者」という適切な距離感を保つことを大切にしています。仕事としてできることと、個人的な関わりは分けて考えるようにしていますね。
Q. 利用者さん自身の力を尊重するという意味では、どんなことを意識されていますか。
M:私は「教える」というよりは、ご本人が主体的に動けるよう支えることが大切だと思っています。

K:一つに絞るのは難しいですが、「自分で人生を選べるようになること」を大切にしています。「先生が言ったから」ではなく、「自分で決めたから」という気持ちで人生を歩んでほしいんです。就労移行支援は利用期間が限られています。だからこそ、ここを卒業した後も、自分で考え、自分で選択できる力を身につけてほしいと思っています。
E:「自分の一歩」と「利用者さんの一歩」は違う、ということです。これは障害福祉の仕事に携わるようになって強く感じるようになりました。私にとっては小さな一歩でも、その方にとっては、とても大きな挑戦であることがあります。だからこそ、その方の歩幅に合わせて支援することの大切さを学びました。
私は利用者さんと同じ経験をしてきたわけではありません。例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えている方や、大切なご家族を事故で亡くされた方の気持ちを、私が完全に理解することはできません。だからといって、「理解できないから寄り添えない」とは思っていません。理解しようと努力し、その方に寄り添いたいという気持ちは常に持っています。その方の人生そのものになることはできませんが、その方が目指す未来に向かって、自分にできることは精一杯していきたいと思っています。
Q. 皆さんが利用者さんと関わる中で、成長や変化を感じてうれしかった出来事はありますか。
K:もちろん、一番大きな達成感は、利用者さんが就職された時だと思います。でも、今はその前段階の変化が何よりうれしいですね。利用を始めた頃は自己肯定感が低く、ほとんど話せなかった方が、少しずつスタッフと話せるようになり、やがて他の支援員にも笑顔を向けてくださるようになる。そういう日々の変化を見ることが、今は一番の喜びです。
E:高校時代には学校へ通えなかった方が、今では毎日通所できるようになっているケースもあります。そういう姿を見ると、「環境によって人は変われるんだな」と感じます。また、以前担当していた利用者さんが、今こうして少しずつ成長されている姿を見ることができるのも、この仕事ならではの喜びだと思っています。
Q. 就職などの大きな目標だけではなく、日々の中にある小さな変化も大切にされているんですね。支援を通して、利用者さんの新しい一面が見えたこともありますか。
K:例えば今日は、「自分の強みを見つける」というプログラムを行いました。多くの方は、自分の短所はすぐに言えるのですが、「自分の長所は?」と聞かれると、意外と答えられません。そこで、さまざまな強みを書いたカードを使いながら、「これが当てはまるんじゃないかな」と一緒に考えていきました。さらにグループワークも取り入れました。自分では欠点だと思っていることでも、周りのメンバーから「ここがあなたの良いところ」と伝えてもらうことで、新しい気づきにつながります。利用者さんからは、「このカードを写真に撮って持ち帰ってもいいですか」と言われたんです。自己肯定感につながるきっかけになったのかなと思い、とてもうれしかったですね。
E:私の印象に残っているのは、「他者承認」をテーマにしたプログラムでです。利用者さん同士で、お互いの良いところを書き出して伝え合う内容だったのですが、そのプログラムが終わった後、利用者さんから「先生たちの良いところも書きたい」と言ってくださったんです。ホワイトボードに先生たち一人ひとりの良いところを書いてくれて、その中で私には「榎本さんは相談しやすい」と書いてくれました。私自身、「何でも相談できる存在になりたい」と思って仕事をしているので、その言葉は本当にうれしかったですね。自分が目指していたことが、利用者さんに伝わっていたんだと感じられた瞬間でした。


