療育手帳と精神障害者保健福祉手帳について
日本には、発達障害のお子さんと家族を支えてくれる手帳制度があります。お子さんの育ちを支えたり、教育機関を選ぶ選択肢が増えたり、金銭面での割引や給付などのサービスを受けることができます。
「療育手帳」と「精神障害者保健福祉手帳」の概要と手帳を取るメリットについてご説明します。
お子さんの「発達の遅れ」「発達障害」を指摘されたら
(病院にて)
お子さんは発達の遅れが見られますね。診断名はまだつけられないかな。広い意味で何かしらの発達障害はあるでしょう
うちの子が発達障害だなんて・・・。
----(障害をもつ子の親の集いにて)----
発達障害について調べるほど不安になってしまう。どうしたらいいんだろう
障害がわかって手帳を受け取るまで、私もたくさん泣いて、悩んで、葛藤があったのよ
うちの子は発達が遅いだけで、お薬や療育で治るかもしれないし、どうしよう、未来が怖い・・・
けどね!お母さん!手帳について知っておけば、その子を一生支えてくれる制度に繋がるかもしれない。選択肢は多いほうがいいのよ!
手帳は必ず取らなければいけないわけではありません。ただ、手帳で障害を証明することで、お子さんを助けてくれる制度やサービスが増えることもたしかです
制度があることと、それを使いこなすことは別だけどね。まずは知ることから始めたらどうかしら?
よろしくお願いいたします。。。。
手帳の種類
障害のあるお子さんのための手帳には「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の三種類があります。
「療育手帳」のことを「愛の手帳」「みどりの手帳」と呼ぶ自治体もあります。
障害種別ごとの手帳の種類について
身体障害者手帳 | 身体障害(肢体・目・耳など)、内部疾患(心臓疾患など) |
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療育手帳 | 知的障害、知的+発達障害 |
精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害、精神障害+発達障害、発達障害 |
知的障害や発達障害のお子さんは療育手帳を取得することが多いですが、知的障害を伴わない場合には精神障害者保健福祉手帳を取得する場合も多くあります。
ただ、身体障害者手帳と療育手帳に比べて、精神障害者保健福祉手帳は使える福祉サービスが少ないなどの違いがあります。
療育手帳とは?
療育手帳は知的障害・発達障害の人が各種のサービスを受けやすくすることを目的に交付されるものです。都道府県ごとに手帳の名前が違うので、療育手帳のことを「愛の手帳」「みどりの手帳」と呼ぶ自治体もあります。
対象は? | 知的障害者、知的障害を伴う発達障害者 ※標準化された知能指数がIQ75ないし70以下 |
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どんな時に利用する? | 障害者向けの支援制度を利用したい場合、特別支援学校への入学を希望するとき、就労に向けた支援を受けたいとき |
どこで申請する? | 市町村の窓口に申請。18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所で障害の程度等の判定をうける |
どんなサービス? | 各種支援制度の利用、国税、地方税の諸控除や各種割引 例)・心身障害者扶養共済 ・心身障害者(児)医療費助成制度 ・税金の減額・免除 ・各種交通機関の割引 |
その他のポイント | 療育手帳を「愛の手帳」「みどりの手帳」と呼ぶ自治体もある |
療育手帳の交付は知能検査の結果と日常生活の状態の総合的な状態で判断されます。IQだけで判断されるものではありません。発達障害のある人でIQが高いために療育手帳の取得が難しい場合、精神障害者保健福祉手帳を取得することができます。
うちの子はIQが基準よりも少し高いので療育手帳が取れないかもしれないです。。。
自治体によっては「自閉症特例」と言って基準以上のIQがある子でも療育手帳の交付を受けられるところもあるのよ。療育手帳は自治体ごとに基準が少しだけ違うから、子供に療育手帳が必要なら、よーーく確認してみることね。
精神障害者保健福祉手帳とは?
精神障害者保健福祉手帳は精神障害・発達障害の人が各種のサービスを受けやすくすることを目的に交付されるものです。
対象は? | なんらかの精神疾患(てんかん、発達障害を含む) |
---|---|
どんな時に利用する? | 障害者向けの支援制度を利用したい場合 |
どこで申請する? | 市町村の窓口に申請。各地域の精神保健福祉センターなどで判定をうける |
どんなサービス? | 各種支援制度の利用、国税、地方税の諸控除や各種割引 例)・心身障害者扶養共済 ・税金の減額・免除 ・各種交通機関の割引 |
その他のポイント | 18歳未満はおおむね2~4年ごと、18歳以上はおおむね10年ごとに更新が必要で、そのたびに診断書が必要になります。 |
初診日から6ヶ月以上を経過した日以降の診断書によって申請できる決まりになっています。発達障害の場合には一過性の症状ではありませんが、精神障害と同様の基準になりますので、手帳が必要となる時期を見越して、計画的に医療機関の受診をしておくことが必要です。
うちの子は精神障害者保健福祉手帳をとることになりそうです。2年ごとに更新が必要だったり、療育手帳よりも使える制度が少ないみたいだけど、この子にとって使えるサービスが増えるなら持っておいたほうがいいかな・・・・って。
手帳にはどんなメリット・デメリットがあるの?
手帳のメリット
療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っていることで「様々な支援」「各種サービスや割引」を受けられるというメリットがあります。
サービスによっては自治体ごとのちがいや、障害等級などの利用要件があるので、より詳しい説明はお住まいの自治体の福祉の窓口にご確認下さい。
手帳のメリット① 教育の選択肢が広がる
手帳を持っていることでお子さんの障害特性に合わせた支援をうけることができます。
例えば、公立保育園に入園の際に、療育手帳を持っている場合、優先順位が高くなることや、特別支援学校への入学を希望する場合、療育手帳が必要になる場合があります。
詳しくは自治体の教育相談窓口にお問い合わせ下さい。
手帳のメリット② 就労支援を受けられる
手帳を持っていることで障害者向けの就労支援サービスを利用することができます。
高校卒業後に仕事に就くために「就労移行支援事業所」で働くための基礎訓練をうけたり、企業の特例子会社や障害者雇用枠で就労することが可能です。
手帳のメリット③ 各種サービス・割引を受けられる
手帳を持っていることで障害児福祉手当や特別児童扶養手当などの各種手当てを受けることができます。(申請要件を満たしているかは、お住まいの自治体の福祉の窓口に問い合わせて下さい。)
また、以下の様な割引を受けることができます。
・NTTの電話番号案内の無料利用
・携帯電話の割引利用
・NHK受信料の減免
・公共交通機関の割引
・所得税の控除
・住民税の控除
・相続税の障害者控除
・自動車税・軽自動車税の減免、自動車取得税の減免など
手帳のデメリット
手帳を取ることのデメリットを気にする方もいますが、手帳を取ることによる不利益やデメリットはありません。
障害がある人が手帳をかならず取得しなければならないわけではなく、手帳の交付を受けていることを周囲に伝える義務もありません。
手帳は障害を理解してもらうことが必要だと思った時に利用するものです。取得後も手帳が不要になれば返すこともできます。
環境は変えられる
手帳を持っていると、こんなに色々サービスが使えるなんて全然知らなかったです。生まれ持ったもので人生が100%決まるのではなくて、育つ環境も大きく影響する気がしてきました
障害のある子どもは “かわいそう” とか “不幸” ではなく “生きづらい” のよ。
子どもが小さい間は子どもにとって親が全てだから。子どもが生きやすい環境を家族で作ってあげてね
《関連する記事》
・発達障害とは? ~発達障害の定義・原因・種類・症状・相談窓口まとめ
・受給者証ってなに?
この記事では制度・法律の名称について正しく記載するために「障がい」ではなく「障害」と記載しています。
《この記事の参考にさせてもらった資料》
・日本発達障害ネットワーク『改訂版 発達障害児のための支援制度ガイドブック』(2015)唯学書房
・東京都保健福祉局障害者施策推進部精神保健・医療課『発達書害者支援ハンドブック2015』東京都保健福祉局
・軽度障害児・者の親の居場所BOX
・療育手帳やってきた